市民協働ということ

 NPO上田図書館倶楽部が掲げる「市民協働による新たな図書館サービスの創造」のキーワード“市民協働”ということについて、少し述べたいと思います。

 総務省はこの8月26日、市町村・NPO自治会等が連携して「地域協働体」を創設して、公共的サービスを提供する実証事業を始める方針を決めたと新聞報道がありました。
 地域協働、市民協働等、「協働」という思想が図書館活動、図書館サービスのキーワードとなり、市民協働がこれから本格的な出番だと感じています。

 この度の衆院選挙の各党のマニフェストには、地方分権、国民参加という潮流が顕著です。当上田市においても「地域内分権及び市民協働の推進」が市政推進の重点目標になっています。(「広報うえだ」09.6.1号)
 そんな時代潮流に先駆けてNPO上田図書館倶楽部は今から5年前、上田情報ライブラリーの建設、開館に呼応して、市民の関心と期待を背景に、自主的な市民団体として平成16年1月に設立されました。

 ところで、図書館における市民協働の必要性は次のように考えています。
1 図書館は本来、市民が学習活動、情報入手やそのスキルアップ、文化活動或いは交流の場として活用するものであるから、市民は単に貸出等の利用者であるだけでなく、主権者として図書館の活動、運営にも参画することが当然です。
2 これからの図書館は課題解決支援型サービス、ハイブリット図書館づくり、読書・活字文化の振興等が主要テーマであるが、これらを実現していくためには経験、知識、技術等をもつ市民の参画、職員の専門性の向上及び関係機関・団体との連携が必要です。
3 これからの職員の専門性には、主題専門知識、地域課題やニーズを把握する能力、情報技術・検索能力、読書活動や事業の企画力、図書館経営能力等が重視されているが、これらの専門性は現在の司書教育には不足しているものであり、それらの経験、知識、技術等と意欲をもつ市民の力を活用し、職員とコラボレートすること、つまり市民協働が必要です。
 また、その不足を補うために、この度の助成事業により情報検索・読み聞かせのスキルアップ、主題専門知識の修得を目指した人材育成事業を位置づけています。
4 行政直営における多くの図書館の管理運営は、行政一般職(事務職)と司書等の臨時職員や非常勤職員で構成されているが、行政一般職は2,3年で人事異動を繰り返していくことが不可避であり、また臨時職員や非常勤職員は不安定な身分、低い待遇におかれているとともに、事業や運営への発言権は弱く、決定権は無いのが一般的です。
 このような現状の中で、図書館サービスのレベルを右肩上がりに持続的に充実、発展させるためには、職員の異動等に影響されることなく図書館サービスを充実、発展させるベースとして市民団体が図書館を支える仕組みが必要です。

 この度の助成事業を契機として、当倶楽部は市民協働という方法により、新たな図書館サービスの創造を目指しております。この市民協働という在り方、方法は、どの図書館でも実施可能なものであり、望ましい運営方法だと思いますので、その経験、ノウハウ、成果等を蓄積し、多くの図書館に還元できれば幸いだと思います。
09.8.30 宮下明彦